マレーシアで事業を始めるなら、法人はSdn Bhd(私的有限会社)が標準です。登録自体は資本金RM1から、外国人100%出資でも可能で、SSM(企業委員会)への登録料はRM1,000です。ただし、その会社で外国人にEP(就労ビザ)を出すには、払込資本金が実務上RM250,000〜RM1,000,000必要になります。法律上の最低額と、ビザ取得のための実質的な最低額は別のルールです。この記事では、Sdn Bhdの要件、費用、税、EP取得までの流れを公的・専門家の情報で整理し、最後に自社データで駐在員の住居費を示します。ビザ全体の比較はビザ比較の記事を参照してください。

結論|登録はRM1,000・資本金RM1から。ビザ目的ならRM50万が起点

要点は次の表のとおりです(SSM公式・ASEAN Briefing・Baker McKenzie等・2026年9〜10月確認)。

項目内容
会社形態Sdn Bhd(私的有限会社)。外資100%も多くの業種で可能
登録料(SSM)RM1,000(1申請あたり)
社名予約1社名あたりRM50(承認後30日以内に設立申請)
最低取締役1名。少なくとも1名はマレーシア在住
会社秘書役設立後30日以内に任命
法律上の最低資本金RM1(授権資本の制度は廃止)
EP申請時の払込資本金現地資本100%: RM250,000/外資30%以上の合弁: RM350,000/外資100%: RM500,000/外資の卸・小売・貿易(WRT)等: RM1,000,000
法人税中小企業は最初のRM150,000に15%、次のRM450,000に17%、超過は24%

RM1,000,000という数字は法律上の要件ではありません。2026年3月に国内貿易・生活費担当大臣が「外国法人にRM1,000,000の払込資本金を課す規定は現行法にない」と述べており、行政上の許認可の条件として運用されています(ASEAN Briefing・2026年9月確認)。

設立の要件|在住取締役と会社秘書役が必要

SSMの案内によると、Sdn Bhdの設立要件は次の点です(ssm.com.my・2026年9月確認)。

  • 取締役は1名以上。うち1名は、マレーシアに主たる居住地を持つ人であること
  • 株主は1名以上、株式は1株以上で足りる(株主1名の会社も可能)
  • 発起人(promoter)が1名以上
  • 会社秘書役は設立後30日以内に任命。資格者(専門団体の会員またはSSM免許保有者)で、マレーシア市民または永住者が条件(専門家の解説・2026年9月確認)

日本在住の日本人が1人で設立する場合、在住取締役をどう確保するかが最初の壁です。設立時に居住実態のない外国人が単独で取締役になる方法は、SSMの資料では確認できません。専門会社の中には名義取締役(nominee director)のサービスを提供するところもありますが、責任範囲や費用は契約ごとに異なり、公表なしです。

費用|公的費用はRM1,000台、専門家報酬は公表なし

費用項目金額出典
SSM登録料RM1,000SSM公式
社名予約RM50/名法律事務所・専門家解説
会社秘書役の年間報酬公表なし事務所ごとに異なる
登記住所・会計・監査・年次申告公表なし事務所ごとに異なる
払込資本金(EP申請用)RM250,000〜1,000,000ASEAN Briefing

専門会社が「設立パッケージ」を出していますが、含まれる範囲が事務所ごとに異なるため、金額を一般化した数字はここでは示しません。資本金は事業に使えるお金で、コストではなく預ける資金という位置づけです。ただし、EP承認前に払い込む必要があります。承認後に資本を増額すると、承認手続きをやり直す必要が生じます(ASEAN Briefing・2026年9月確認)。

税と維持|法人税15〜24%、確定申告は決算後7ヶ月以内

法人税の税率は、居住法人が課税所得に対して累進です。中小企業の優遇税率は、払込資本金がRM2,500,000以下(および年間総収入の上限あり)の会社が対象です。

課税所得税率(中小企業)
最初のRM150,00015%
次のRM450,00017%
超過分24%

一般の法人と非居住者は24%です(3E Accounting・2026年4月付の解説・2026年9月確認)。申告書(Form C)は決算日から7ヶ月以内にLHDN(内国歳入庁)のe-Filingで提出します。自己申告制で、税額の計算責任は会社にあります。サービス税は2024年3月1日から8%に引き上げられました(同解説)。売上規模による登録義務の基準は、要確認です。

会社は、税務申告のほかにSSMへの年次申告と、会計・監査の維持費がかかります。法人と個人の税の関係、日本側の課税(外国子会社に関する日本の制度など)は、マレーシアと日本の税理士の両方に確認してください。個人の税は税金ガイドの記事で扱います。

EPを取る流れ|会社設立から就労ビザまで

外国人が自分の会社でEPを取る場合の流れは、次の順序です(専門家の解説・ESDの要件・2026年9月確認)。

  1. 社名予約と設立(SSM)。在住取締役と会社秘書役を確保
  2. 払込資本金を払い込む(外資100%ならRM500,000が目安)
  3. 事業許可・ライセンス(業種による)を取得
  4. ESD(Expatriate Services Division)に会社を登録してEPを申請

EPの月給基準は、2026年6月1日以降の申請で引き上げられました。区分Iは月給RM20,000以上(旧RM10,000)、区分IIはRM10,000〜19,999(旧RM5,000〜9,999)、区分IIIはRM5,000〜9,999(旧RM3,000〜4,999)です(KPMG・EIG Law・2026年9〜10月確認)。適用対象は、KPMGとEIG Lawが全企業の新規・更新申請とし、Baker McKenzieはMDEC登録企業向けと記載しています。自社が該当するかは要確認です。区分IとIIの通算上限は10年、区分IIIは5年です。区分IIとIIIには承継計画(現地人材への引き継ぎ計画)が必要です(EIG Law)。

自分の給与を、区分IIIの下限RM5,000で設定するのは、事業の実態と釣り合うかを含めて専門家に確認が必要です(審査での判断基準は公表なし)。デジタル関連の事業なら、MDECのMalaysia Digital(MD)ステータスを取る経路もあります。EP以外の選択肢は、DE Rantauの記事(海外の収入で滞在)やMM2Hです。

自社データ|駐在員の給与と住居費

EPで来た駐在員の住居費を、自社のiProperty現役掲載(デサパークシティ、賃貸176件・2026年9月29日時点のCSV・外れ値除外なしの単純集計)で見ます。

EPの基本給家賃が給与の30%以内の掲載家賃が給与の50%以内の掲載
RM5,000(区分IIIの下限)0件(RM1,500以下)6件・3%(RM2,500以下)
RM10,000(区分IIの下限)11件・6%(RM3,000以下)54件・31%(RM5,000以下)
RM20,000(区分Iの下限)93件・53%(RM6,000以下)148件・84%(RM10,000以下)

デサパークシティの家賃中央値はRM6,000で、区分Iの下限の月給でも給与の30%です。区分IIIの下限の月給では、中央値の家賃が給与を上回ります。EPの判定は基本給のみで、住居手当は算入されません。雇用主が住居手当を別に支給する設計かどうかで、住める棟の幅が大きく変わります。サウス・ブルックス、ウェストサイドIIIなどが家族向けの中心帯、ワン・セントラルパークやパーク・リージェントは上位帯です。家賃の全体像はクアラルンプールの家賃相場の記事、賃貸契約の記事を参照してください。

法人名義で不動産を購入する場合、外国法人の印紙税は個人の外国人と同じ8%です(購入手順の記事・2026年1月1日以降のMOT)。外国法人が連邦直轄領で買う場合の最低価格などの細目は、公式資料で確認できていません(要確認)。

個別に相談したい方へ

法人設立とEPの申請には、資本金の払込、在住取締役、事業ライセンスの準備が並行します。設立後の駐在員の住まいは、EPの区分、家族構成、通勤先が決まってから探すと無駄が出ません。希望の予算、入居時期、家族構成をWhatsAppで送っていただければ、掲載データから条件に合う棟と物件を案内します。生活費の全体像は移住費用の記事、口座開設は銀行口座の記事にあります。

よくある質問

Sdn Bhdは外国人が100%出資で設立できますか

多くの業種で可能です。ただし、卸・小売・貿易(WRT)など一部の業種は外資規制や許認可の条件があり、EP申請時の払込資本金も高くなります(RM1,000,000が目安)。業種ごとに事前確認が必要です。

最低資本金はいくらですか

法律上はRM1から設立できます。ただしEPを申請する場合、ESDの運用で外資100%ならRM500,000、現地資本100%ならRM250,000が目安です。RM1,000,000は法定要件ではなく、行政上の条件として運用されています。

日本にいながら会社は設立できますか

取締役の1名以上はマレーシア在住が条件です。日本在住の人だけでは要件を満たせないため、在住取締役の確保が必要になります。方法と費用は専門会社ごとに異なり、公表なしです。

法人税はいくらですか

中小企業(払込資本金RM2,500,000以下など)は、最初のRM150,000が15%、次のRM450,000が17%、それ以上は24%です。標準の法人は24%です(2026年4月付の解説・2026年9月確認)。

法人を作れば就労ビザはすぐ取れますか

すぐには取れません。資本金の払込、ESDへの会社登録、EPの月給基準(区分IIIでRM5,000〜)の審査を経て承認されます。区分II・IIIでは承継計画も求められます。