マレーシアに90日を超えて住むには、目的に合ったビザ(パス)が要ります。就労なら雇用パス(EP)、リモートワークならDE Rantau、資産で滞在するならMM2H、家族や留学生の親には同伴パス・長期社会訪問パスがあります。どれを選ぶかは「働く場所」「収入の出どころ」「家族構成」の3点でほぼ決まります。本記事は5つの主要ルートを条件・費用・期間・就労可否で横並びにし、自社のiProperty掲載データ(クアラルンプールのデサパークシティ)の家賃と突き合わせます。数字は公的機関の発表と法律事務所・現地専門家の解説を2026年9月30日に確認したものです。制度は頻繁に変わるため、申請前に公式で再確認してください。

結論|目的が「働く」ならEP、「日本の仕事を続ける」ならDE Rantau、「資産で住む」ならMM2H

最初に選ぶ基準は次の3つです。

  • マレーシアの会社に雇われる、または自分の会社で働く: 雇用パス(EP)。月給RM5,000以上が入口で、2026年6月1日から基準が引き上げられました。
  • 日本の会社・日本の顧客の仕事をリモートで続ける: DE Rantau Nomad Pass。年収USD24,000(IT・デジタル職)またはUSD60,000(それ以外)以上、期間は最長12ヶ月+12ヶ月です。
  • 仕事をせず資産と年金で暮らす: MM2H。Silverは定期預金USD150,000・住宅購入RM600,000以上から。詳細はMM2H最新条件2026で扱います。

90日以内の滞在は、日本国籍なら観光・商用はビザ不要です(パスポート残存期間などは出発前に外務省・在マレーシア日本大使館の最新案内で確認してください)。ビザなし滞在を出入国で繰り返して住み続ける方法は、制度上の居住手段ではありません。

目的主なビザ主な入口条件期間マレーシアでの就労
現地企業で働く雇用パス(EP)III〜I月給RM5,000〜RM20,000以上最長5年(III)・10年(I/II)雇用主の下で可
日本の仕事をリモートで続けるDE Rantau海外源泉の年収USD24,000/60,000以上12ヶ月+更新12ヶ月現地企業・現地顧客は不可
資産・年金で暮らすMM2H(Silver/Gold/Platinum)定期預金USD150,000〜1,000,000+住宅購入5〜20年Platinumのみ可
配偶者・子ども同伴パス(EP保持者の家族)主申請者のEPに連動主申請者に連動不可
留学学生パス(Student Pass)学校が申請就学期間原則不可

90日ビザなし滞在の使いどころと限界

日本国籍の旅行者は、観光・商用で90日以内ならビザ不要で入国できます(在マレーシア日本国大使館・2026年9月確認)。入国時はマレーシア・デジタル入国カード(MDAC)の事前提出が全外国人に義務化されています(2024年1月1日から。入国3日前から提出可)。

物件を探す下見の期間としては十分です。ただし、賃貸契約を結んで数ヶ月住むことと、就労・営業活動を行うことは別で、ビザなし滞在では就労できません。90日を超える観光・商談、就労、留学は、出発前にそれぞれの目的に沿ったビザ・パスの取得が必要です。

雇用パス(EP) 2026年6月から月給基準が2倍に

EPは外国人がマレーシアの雇用主の下で働くための就労パスで、移民局の外国人人材サービス部(ESD)が扱います。内務省が2026年1月11日に発表した改定で、2026年6月1日以降に提出される新規・更新の申請から、月給の下限が次のとおり引き上げられました(内務省発表・法律事務所EIG Law、KPMG、Baker McKenzieの解説。2026年9月確認)。

区分改定前の月給2026年6月1日〜の月給上限期間家族(同伴パス)
EP IRM10,000以上RM20,000以上10年可
EP IIRM5,000〜9,999RM10,000〜19,99910年(後継者育成計画あり)可
EP IIIRM3,000〜4,999RM5,000〜9,999(製造関連サービスはRM7,000〜)5年(後継者育成計画あり)可(今回から追加)

EP IIIで家族の帯同が認められたのは今回が初めてです。期間制限の適用方法(ポジション単位か個人単位か)や後継者計画の提出時期など、複数の法律事務所が「ESDからの追加の明確化が待たれる」と指摘しています(EIG Law・2026年9月確認)。また、当初の発表は「MDEC(マレーシアデジタル経済公社)が扱う企業」を対象としたとする解説と、全EPが対象とする解説があり、非MDEC企業の扱いは申請前にESDへ確認が必要です。

雇用主側の要件も見落とせません。ESDは、雇う会社の払込資本金に下限を設けています。100%外資でRM500,000、外資・現地の合弁(外資30%以上)でRM350,000、100%現地資本でRM250,000です(MDEC・3E会計事務所・2026年9月確認)。自分の法人でEPを取る場合の詳細はマレーシアで法人設立(Sdn Bhd)にまとめました。

DE Rantau Nomad Pass リモートワーカー向けの12ヶ月ビザ

DE Rantauは、マレーシア国外の会社・顧客から報酬を得るリモートワーカー向けのパスで、MDEC(マレーシアデジタル経済公社)が承認を出し、移民局がパスを発給します(マレーシア政府ポータルRAI・2026年9月確認)。条件・費用・手順はDE Rantauの解説記事で詳しく扱います。ここでは比較軸だけ示します。

  • 年収要件: IT・デジタル職USD24,000、それ以外USD60,000(MDEC FAQ・2026年8月28日版の内容を解説する複数の専門サイトによる)
  • 期間: 12ヶ月、更新で最大24ヶ月
  • 費用: 主申請者RM1,000、同伴者1人RM500(RAIポータル。SST込みでRM1,080・RM540とする解説あり)
  • 就労: マレーシアの会社・顧客の仕事は不可

「日本の会社員として在宅で働き続ける」立場なら、EPより手続きが軽く、現実的な入口です。

同伴パスと長期社会訪問パス(LTSVP)

EP保持者の法定配偶者と子(18歳未満。障害のある子は年齢制限なし)は、同伴パスの対象です。有効期間は主申請者のパスに連動し、同伴パスでの就労はできません(現地専門家の解説・2026年9月確認)。MDEC経由で申請する場合、同伴パスの費用はRM540です(MDEC・2026年9月確認)。

対象外の家族には、長期社会訪問パス(LTSVP)があります。移民局は、EP保持者の配偶者・子に加え、60歳以上で本国に家族がいない高齢者、外国人留学生の近親者、医療目的の患者と付添人などを対象に挙げ、最短6ヶ月から発給します(移民局公式・2026年9月確認)。マレーシア国籍者の配偶者は最長5年で、条件を満たせば就労もできます(同)。子どもをインター校に通わせる親の滞在資格は、親のビザ側で解決するのが基本です。学校の選び方はクアラルンプールのインターナショナルスクール記事をご覧ください。

学生パス 学校が申請し、観光ビザからの切替は不可

学生パスは、受け入れ校が申請主体となり、本人が直接申請するものではありません。大学・私立校ではEMGS(Education Malaysia Global Services)経由で申請する方式が一般的です。観光ビザ(ソーシャルパス)から学生パスへの切替は認められず、申請費用と手続き日数は学校ごとに異なるため、公式の一律額は確認できませんでした(校ごとに要確認)。

自社データで見る 各ビザの収入・資産要件と家賃の距離感

家賃の感覚がないままビザを選ぶと、生活が回らなくなります。自社のiProperty掲載データ(デサパークシティ・現役掲載399件から賃貸176件を抽出、基準日2026年9月29日)で、各ビザの入口条件と家賃を並べます。

間取り賃貸中央値(月)件数対比するビザ要件
全体RM6,000176—
1BRRM4,0009EP III(月給RM5,000〜)の単身なら家賃が月給の80%
2BRRM5,50060EP IIIの下限RM5,000を上回る。DE Rantau(IT)月換算RM8,160の67%
3BRRM7,00087EP II(月給RM10,000〜)の70%

DE Rantauの月換算は、USD24,000をBNMの2026年9月23日終値(1USD=RM4.08前後)で換算した値(年RM97,920、月RM8,160)です。EP IIIの下限月給RM5,000は、デサパークシティの2BR家賃中央値RM5,500を下回ります。家賃と生活費を月給内で賄うなら、EP III単身で1BRか、より郊外を選ぶ設計になります。月額の生活費全体は移住費用の記事で試算しています。

購入義務のあるMM2Hは、資産条件が別次元です。同じデータで売出223件の中央値を見ると、2BRはRM1,480,000(51件)、3BRはRM2,400,000(103件)でした。MM2H Silverの購入下限はRM600,000ですが、クアラルンプール連邦直轄領では外国人の最低購入価格がRM1,000,000で、両者は別ルールです。詳細は購入手順の記事とMM2Hの記事に整理しています。賃貸相場は賃貸相場の記事で棟別に確認できます。

棟別の入口としては、ウェストサイドIII(2BR〜3BRの中心・賃貸中央値RM5,800)、サウス・ブルックス(同RM6,900)、ワン・セントラルパーク(同RM7,000)、パーク・リージェント(同RM10,000)が代表的です。

ビザ選びの手順 3つの質問で決める

  1. 収入の出どころは。 マレーシアの会社・自分の法人なら EP。海外の会社・顧客ならDE Rantau。資産・年金ならMM2H。
  2. 何年住むか。 1〜2年ならDE Rantau。5年以上の長期ならMM2HかEP。
  3. 家族は誰が同行するか。 EP・MM2Hは配偶者・子を扶養家族にできます。DE Rantauも家族の追加は可能ですが、家族は現地で働けません。

EPからMM2Hへの切替や、DE Rantau終了後の次の在留手段など、乗り換えの可否は個別の事情で変わります。移民局・MOTAC・MDECの窓口で事前に確認することが安全です。地域選びはクアラルンプール日本人の住むエリア比較、医療は医療事情の記事を参照してください。

滞在資格・予算・入居時期をWhatsAppで送っていただければ、その時点の掲載データと突き合わせて個別に案内します。

よくある質問

日本人はマレーシアにビザなしで何日滞在できますか

観光・商用目的で90日以内はビザ不要です(在マレーシア日本国大使館・2026年9月確認)。入国前にMDAC(デジタル入国カード)の提出が必要です。就労や90日を超える滞在は、目的に応じたビザ・パスを出発前に取得します。

EPの月給基準はいくらですか

2026年6月1日以降の申請で、EP IがRM20,000以上、EP IIがRM10,000〜19,999、EP IIIがRM5,000〜9,999です(内務省発表。EP IIIの製造関連サービスはRM7,000以上)。雇用する会社にも払込資本金の下限(100%外資でRM500,000など)があります。

DE Rantauで働けるのはどんな人ですか

海外の会社に雇用されるか、海外の顧客から報酬を得るリモートワーカーです。年収要件はIT・デジタル職でUSD24,000、それ以外でUSD60,000です。マレーシアの会社・顧客の仕事はできません。

EPの同伴パスは誰が取得できますか

法定配偶者と子(18歳未満、障害のある子は年齢制限なし)です。2026年6月からEP IIIの保持者にも同伴が認められました。同伴パスでは就労できず、就労するには別途EPなどへの切替が必要です。

MM2Hと他のビザの一番大きな違いは何ですか

資産で滞在する点です。MM2Hは、定期預金(Silver USD150,000〜Platinum USD1,000,000)と住宅購入が条件で、就労はPlatinumのみ可能です。雇用主の雇用契約や海外の収入証明ではなく、資産で条件を満たす点が、EPやDE Rantauと異なります。