マレーシアの不動産に外国人が投資する話は、利回りの高さだけが語られがちです。実際は、州ごとに違う最低購入価格、2026年から一律8%になった印紙税(MOT)、非市民に不利なRPGT(不動産譲渡益税)、そしてクアラルンプール(KL)の高層コンド市場で進む供給過剰まで、差し引くべき要素が多くあります。この記事はデサパークシティ限定ではなく、マレーシア全体で外国人が不動産投資を検討する際の条件・費用・利回り・出口を一次ソースと自社の実成約データで整理します。良い面だけでなく、供給過剰と流動性の弱さもそのまま書きます。
外国人が買える条件は州でRM100万〜300万まで差がある
全国共通の下限は、経済省(現・経済省傘下EPU)の「不動産取得ガイドライン」(2022年7月13日施行)が定める1戸あたりRM1,000,000です。これを下回る物件、州が指定する低・中低コスト住宅、マレー人保留地、開発内のブミプトラ割当住戸の4種類は、どの州でも外国人は取得できません(2026年9月時点)。
この上に、各州が独自の最低価格と条件を重ねます。マレーシア弁護士会Circular No 444/2024(2024年10月時点の一覧)から、主要な州を抜き出します。
| 州・直轄領 | 住宅の最低購入価格 | 備考 |
|---|---|---|
| WPクアラルンプール・プトラジャヤ・ラブアン | RM1,000,000 | デサパークシティはこの区分 |
| セランゴール ゾーン1(Petaling・Gombak・Hulu Langat・Sepang・Klang)・ゾーン2(Kuala Selangor・Kuala Langat) | RM2,000,000 | ストラタ・区分所有一戸建てのみ。個別権利証の一戸建ては不可 |
| セランゴール ゾーン3(Hulu Selangor・Sabak Bernam) | RM1,000,000 | |
| ペナン島(サブセール) | ストラタRM1,000,000・一戸建てRM3,000,000 | |
| ペナン本土(サブセール) | ストラタRM500,000・一戸建てRM1,000,000 | |
| ジョホール | RM1,000,000 | |
| ネグリ・スンビラン | ストラタRM600,000以上 | |
| ペルリス・クランタン・サラワク | RM500,000 |
KLの基準は、ペルリス・クランタン・サラワクという地方州と並んで全国で最も低い部類です。同じクランバレーでも隣のセランゴールはKLの2倍(ゾーン1・2)で、しかも個別権利証の一戸建ては外国人に閉ざされています。デサパークシティを含むKL連邦直轄領の物件は、都市部の中では参入しやすい側にあるというのが実態です。ただし基準は州の裁量で随時変わるため、購入直前に弁護士へ最新の州通達を確認してください。
購入手続きは州同意が律速、全体で4〜6ヶ月
外国人の取得には国家土地法433B条に基づく州当局の事前承認(State Authority Consent)が必要です。標準的な流れは、予約(Letter of Offer・手付2〜3%)→SPA署名(頭金合計10%)→州同意申請→住宅ローン審査→残金決済→MOT登記、の順です。
所要期間の目安は、現地法律事務所L Y Lu & Co(2025年5月更新)が「弁護士経由で1〜3ヶ月」、Mah Weng Kwai(2024年6月更新)が「少なくとも3ヶ月」としており、州同意がボトルネックです。SPA全体では予約から登記完了まで4〜6ヶ月が目安になります。決済期限を過ぎると遅延利息が付き、極端な遅延では頭金の没収もあります(Donovan & Ho)。この手順とRM150万・RM250万の諸費用試算は外国人の購入手順の記事に詳しくまとめてあります。
諸費用の中心はMOT印紙税8%、総額は価格の9〜10%台
2025年12月27日裁可のFinance Act 2025により、非市民(永住権者を除く)と外国法人への住宅移転の印紙税(MOT)は、2024年1月からの一律4%が一律8%に上がりました。判定基準はSPAの署名日ではなく、移転証書(MOT)が2026年1月1日以降に作成されたかどうかです(現地法律事務所Zaid Ibrahim & Co・2025年10月ほか)。
RM1,500,000の物件なら、MOT印紙税だけでRM120,000(計算根拠: 1,500,000×8%=120,000)。ここにSPA印紙・弁護士費用・評価費用・ローン関連費用(融資利用時)を足すと、現金購入で価格の9.1%、70%融資利用で10.3〜10.4%が目安です(当サイト試算)。内訳と2ケースの全項目試算は外国人の購入手順の記事にあります。
利回りを自社データで検証する|表面3.5%〜5.72%
利回りの数字は、自社が集めたiProperty現役掲載(2026年9月29日時点・399件=賃貸176件・売出223件)とNAPIC由来の公開成約568件(list.my集計・2026年9月時点)から計算しています。
まず、誰でも再現できる概算から始めます。デサパークシティ全体の3BR(3ベッドルーム)は、賃貸掲載176件の3BR(87件)の月額中央値がRM7,000、売出掲載223件の3BR(103件)の価格中央値がRM2,400,000です。年間賃料はRM7,000×12=RM84,000、これを売出価格で割ると表面利回り3.5%です(計算根拠: 84,000÷2,400,000=3.5%)。
この計算は分母に「売主の希望価格(asking)」を使っています。NAPIC由来の実成約は売出価格より低く出る傾向があり(棟別の差は売却の記事参照)、実成約基準に直すと利回りはこの数字より少し上がります。
もっと精度を上げるなら、棟単位で「賃料PSF×12÷その棟の直近12ヶ月実成約PSF」を計算する方法があり、投資利回りの記事で9棟を集計しています。結果は4.85%(パーク・リージェント)から5.72%(パーク・プレイス)で、3BR一括の概算(3.5%)より高く出ます。差の理由は、棟別計算が全間取りの賃料PSFを使い、分母のNAPIC実成約PSFも棟ごとの直近水準を使っているためで、3BRという単一間取りに絞った概算より条件が異なります。どちらも正しい計算ですが、前提が違う数字だと理解してください。
表面利回りはここで終わりではありません。管理費・修繕積立金・固定資産税・空室・家具更新を引いた実質利回りは、投資利回りの記事のウェストサイドIIIの試算で表面4.93%が3.35%まで落ち、非居住者は賃料所得に一律30%の所得税がかかるため税引後は2.22%です。3〜5%台の表面利回りを見て投資判断をするのは早く、経費と税を引いた後の数字で見る必要があります。管理費・修繕積立金の実額は管理費の記事で棟別に整理しています。
出口の流動性は棟で大きく違う
デサパークシティ全体では、NAPIC由来の公開成約が直近12ヶ月で80件。うちパーク・プレイス24件、パーク・リージェント14件、サウス・ブルックス12件の3棟で50件、62.5%を占めます(計算根拠: 50÷80)。一方、ワン・セントラルパークは2件、ノースショア・ガーデンズは0件と、買い手の層が薄い棟もあります。厚い棟は値付けの根拠が取りやすく、薄い棟は成約が示す相場自体が不確かです。
タウンシップ単体のデータでは飽き足らない場合、KL全体の視点も参考になります。EdgePropが2025年7月〜2026年6月の1年間に成約したKLの非landed住宅384件を、過去の取得価格と突き合わせて分析した記事によると、59.9%(230件)が取得価格を上回って売れた一方、40.1%(154件)は損失でした。年率換算の中央値リターンはわずか1.2%、市場によくある取引を除く形で絞り込むと0.5%まで下がります(EdgeProp・2026-09-20)。同記事は好成績の例としてパーク・リージェントの年率13.4%を挙げる一方、KLCCの高級物件でも年率-1.4%の例があるとしており、「エリアの評判」より「取得価格と保有期間」が結果を分けると結論づけています。
この384件はKL全域が対象で、デサパークシティ専用の集計ではありません。パーク・リージェントが好成績な例として名指しされている点は参考になりますが、これをデサパークシティ全体の実績と一般化はできません。また、売出から契約成立までの実際の所要期間(marketing period)を公開する一次データは見つからず、この点は要確認です。参考になるのは成約件数の厚みで、直近成約が薄い棟ほど買い手候補が少なく、売却に時間がかかりやすいと考えるのが妥当です。契約(SPA)から引き渡しまでの所要期間(3〜4ヶ月、外国人が買い手なら5〜6ヶ月)は売却の記事にまとめています。KL以外の選択肢として、シンガポール隣接のジョホールバルはジョホールバルの記事で比較しています。
RPGT(不動産譲渡益税)は非市民に重い
売却益への課税はRPGT(Real Property Gains Tax)で、内国歳入庁(LHDN)が所管します。税率は取得からの経過年数と売主区分で決まります(2022年1月1日以降の処分・LHDN公式)。
| 経過年数 | 市民・永住者 | 非市民・非永住者(外国人) |
|---|---|---|
| 3年以内 | 30% | 30% |
| 4年目 | 20% | 30% |
| 5年目 | 15% | 30% |
| 6年目以降 | 0% | 10% |
外国人は保有6年目以降でも10%が残り、0%にはなりません。決済時には買い手側弁護士が売買価格の一定割合をLHDNへ源泉留保します。非市民・非永住者は7%(マレーシア弁護士会Circular No 444/2024)。控除(RM10,000か譲渡益の10%の大きい方)や費用の差し引き方、RM150万で買ってRM200万で売る具体ケースの手取り試算は売却の記事にあります。
供給過剰リスク|KL高層全体は積み上がっているが、街区単位の数字はない
国家不動産情報センター(NAPIC・所管はJPPH)の1Q2026データでは、全国の完成済み住宅の供給過剰(overhang)は32,801戸・RM163.7億相当で、前期比+7.6%(EdgeProp報道・2026年5月15日時点)。とくにサービスアパートは全国19,263戸・RM165.2億で、前期(18,752戸)から増加が続く数少ないセグメントです。KL単独のサービスアパート過剰在庫は4,181戸。KLの住宅全体のoverhangは3,733戸で、単一四半期の増加幅(+1,678戸)は全国の州・直轄領で最大でした(同・EdgeProp報道)。
この数字はKL全体、それもサービスアパート・中高層コンドが中心の集計で、街区や個別タウンシップ別の内訳は公表されていません。デサパークシティだけを取り出した供給過剰の数字は見つからず、要確認です。当サイトが言えるのは、NAPIC由来の公開成約がタウンシップ全体で年平均100件強(568件÷約5年)という緩やかなペースであることと、Nooraのような新築プロジェクトが今後の供給として控えている事実だけです。「デサパークシティは高級・低密度だから供給過剰と無縁」と断定する根拠は当サイトにはありません。KL高層市場全体が積み上がっている局面であることは、投資判断の前提に入れてください。
投資判断にどう効くか
条件を満たせるか(RM100万以上・州同意)、諸費用(価格の9〜10%台)を織り込めるか、表面3.5〜5.72%が経費と非居住者税を引くと2%台まで落ちる前提で計画できるか、流動性が薄い棟を避けられるか。この4点を順に確認すれば、過度な期待も過度な悲観もせずに検討できます。RPGTは6年目以降に10%まで下がるため、短期の値上がり狙いより、6年以上の保有を前提にした計画のほうが税負担は軽くなります。供給過剰はKL高層市場全体の懸念であり、デサパークシティ固有のリスクかどうかは今の公開データからは判断できません。
投資予算・保有を想定する期間・自分で住むか賃貸に出すかをWhatsAppで送っていただければ、その時点の掲載と成約データを突き合わせて個別に案内します。
よくある質問
外国人はマレーシアで不動産投資できますか
できます。条件は物件が州の定める最低価格以上であること(KLはRM1,000,000)と、州当局の事前承認(State Authority Consent)を得ることです。低コスト住宅やマレー人保留地など、条件を満たしても買えない区分もあります。
表面利回りは何%くらいですか
デサパークシティの3BRを賃貸中央値と売出中央値で概算すると3.5%です。棟別に実成約PSFを分母にすると4.85〜5.72%まで上がります。どちらも経費や税を引く前の表面値で、実質・税引後はさらに下がります。
供給過剰でマレーシアの不動産価格は下がりますか
一概には言えません。NAPICの1Q2026データでは全国のoverhangが前期比+7.6%で増えており、特にサービスアパートが積み上がっています。ただしこれは全国・全体像の数字で、個別の街区やタウンシップの需給は別です。断定的な予測はできず、要確認とするのが正直な答えです。
印紙税(MOT)はいつからいくらですか
2026年1月1日以降に作成される移転証書(MOT)から、非市民(永住権者を除く)と外国法人は一律8%です。SPAの署名日ではなく、MOTの作成日で判定されます。
売るときの税金(RPGT)はどれくらいですか
非市民・非永住者は保有5年以内が一律30%、6年目以降でも10%です。マレーシア市民・永住者は6年目以降0%になりますが、外国人はゼロになりません。決済時に売買価格の7%が源泉留保されます。
どの棟が売りやすいですか
デサパークシティ内では、直近12ヶ月の公開成約件数が多いパーク・プレイス・パーク・リージェント・サウス・ブルックスの3棟が買い手の層が厚く、値付けの根拠も取りやすい棟です。成約が薄い棟は売却に時間がかかりやすいと考えられます。