マレーシアの治安は「殺人は日本並み、強盗と街頭犯罪は日本より明確に多い」というのが、公的統計から見た実態です。外務省の安全対策基礎データ(2025年12月24日更新)は、2024年の殺人を236件(人口10万人あたりの発生率は日本とほぼ同じ)、強盗を4,274件(同・日本の約12倍)と記載しています。移住者が実際に遭いやすいのは凶悪犯罪よりも、ひったくり・スリ・置き引きなどの街頭犯罪と、電話・投資・ネット通販の詐欺です。この記事は警察(PDRM/Bukit Aman)・統計局(DOSM)・外務省の一次情報を整理し、クアラルンプール・ペナン・ジョホールバルの違いと、住まい選びでできる対策をまとめます。

結論|届出は年5.8万件、強盗は日本の約12倍、詐欺は3.5万件

2024年のマレーシア全国の犯罪届出は58,255件で、前年の52,444件から11.1%増えました(DOSM「Crime Statistics, Malaysia, 2025」・2025年10月16日公表)。内訳は財産犯罪47,188件(+12.4%)、暴力犯罪11,067件(+5.9%)です。殺人は237件で9.5%減、強盗は4,276件で6.8%減と、重い犯罪は減っています。一方で増えているのは窃盗などの財産犯罪と詐欺です。

外務省は「街頭犯罪が増加傾向」「詐欺の2024年の被害件数は10年前の約5.6倍の35,368件で過去最高」と明記しています(海外安全ホームページ・2026年9〜10月確認)。

指標(2024年・全国)件数前年比出典
犯罪届出の総数58,255件+11.1%DOSM
財産犯罪47,188件+12.4%DOSM
暴力犯罪11,067件+5.9%DOSM
殺人236〜237件約-9.5%外務省/DOSM
強盗約4,270件約-6.8%外務省/DOSM
詐欺(被害件数)35,368件10年前の約5.6倍外務省

殺人と強盗は外務省(236件・4,274件)とDOSM(237件・4,276件)で1〜2件ずれます。集計時点の差とみられ、本記事は両方を併記しました。

直近の動き|2025年は指数犯罪が減少、KLは監視カメラ1万台

警察の発表では、2025年3月〜2026年3月の指数犯罪(index crime)は前年同期間比で6.4%減少しました。警察は全国的な取り締まり強化を要因に挙げ、「治安情勢は総じて良好で統制下にある」と説明しています(The Star・2026年3月26日報道)。2024年の増加からは反転した形です。

クアラルンプール市内では、AI監視カメラ約1万台の運用が続いています。当局は2020年以降の投資額をRM5億とし、ひったくりが57.6%減、届出犯罪全体が50%減と説明しました(The Rakyat Post・2026年5月5日報道、閣僚・DBKL市長・KL警察本部長の発言)。減少幅の比較基準年は記事内で明示されておらず、当局発表の数字として扱うのが妥当です。

外務省の危険情報|半島部は対象外、サバ州東側のみ

外務省の危険情報は、2026年6月15日の更新でサバ州東側の一部のみが対象です。島嶼部(バンジ島・バラムバンガン島等を除く)がレベル2、同州東側沿岸とバンジ島等がレベル1に引き下げられました。クアラルンプール、ペナン、ジョホールバルを含む半島部に発出中の危険情報・スポット情報はありません(海外安全ホームページ・2026年9月時点の掲載内容)。

「危険情報なし」は犯罪が少ないという意味ではありません。基礎データは同じ資料で、半島部の都市に街頭犯罪への警戒を求めています。

エリア別の実態|KL・セランゴール・ペナン・JB

州や警察管区ごとの統計は、集計期間も指標もそろっていません。次の表は「同じ物差しの比較」ではなく、公表された数字の並記です。

地域期間数字出典
クアラルンプール2024年凶悪犯罪の約56%が強盗。盗難は全国最多外務省
セランゴール州2024年凶悪犯罪の約46%が強盗。強姦372件は全国最多。指数犯罪は1,829件減外務省/The Star
ペナン州2025年1〜9月指数犯罪2,400件(前年同期3,847件、-28.7%)ペナン警察・Malay Mail
ジョホール州2025年1月のみ指数犯罪491件(前年同月496件、-1.01%)報道(The Sun系)

クアラルンプール。 外務省は被害が多い場所として、ブキビンタン周辺、バトゥ洞窟、ムルデカ広場、ジャランアロー、モントキアラ、KLセントラル駅周辺、同駅からKLIAまでの区間を挙げています。クアラルンプール日本人会の防犯ページは、住宅街のタマンデサでも被害が報告されていると記しています。

ペナン。 2025年1〜9月の指数犯罪は前年から28.7%減りました。ただし同じ警察発表で、商業犯罪(詐欺など)は上半期に13,777件、前年同期比+3,434件、被害額RM1億7,460万でした。凶悪犯罪は減っても詐欺は増えています。

ジョホールバル。 州全体の年間統計は確認できず、1か月分(2025年1月)の数字のみです。公表のない範囲は「公表なし」とします。国境の街でもあり、KL・ペナンと単純比較できる材料はありません。

デサパークシティ。 タウンシップ単位の犯罪統計は公開されていません。警備体制の実態はデサパークシティの治安の記事で整理しています。

手口別の対策|ひったくり・スリ・車強盗・詐欺

外務省の基礎データが挙げる、日本人が遭いやすい手口と対策です。

  • ひったくり: 背後から近づく二人乗り・単独バイク。女性と高齢者の被害が多く、抵抗して転倒・引きずられて入院する例があります。バッグはたすき掛けにし、道路側に出さない
  • スリ: バスの車内、駅、大型商業施設。ファスナーのないトートバッグやズボンのポケットに貴重品を入れない
  • 自動車強盗: 追突・接触を装って停車させ、降りたところを襲う手口。不審な点があれば降車せずその場を離れて警察署へ向かう
  • タクシー: 流しは避け、配車アプリで事前に運転手と料金を確認する
  • 詐欺: 銀行・警察を騙る電話詐欺が最多。次いでオンライン通販詐欺、投資詐欺。知人でもネット上のみの相手に送金しない
  • お金見せて詐欺: 「日本円を見せてほしい」と声をかけ、財布から抜き取る手口。相手にせず立ち去る

家庭内では、外務省が「メイドやガードマン等が犯罪者の手引きをする例もある」と注意しています。雇用時の身元確認はヘルパー雇用の記事で扱います。

住まい選びでできる対策|ゲート・ガード・ドアの三重化

街頭犯罪は住まいの外で起きます。住まい側で下げられるのは侵入リスクです。外務省は在住者向けに、玄関のドアと防犯グリルの常時施錠、来訪者の確認、貴重品を金庫に入れることを挙げています。

当サイトのコンド詳細ページ21棟を確認したところ、21棟すべてにガードハウス・警備の記載があり、うち19棟が「24時間警備」を明記しています(当サイト調べ・2026年9月時点。記載は各棟の公式情報・不動産メディアに基づく)。棟を選ぶ際は、ゲートの有無だけでなく、来訪者登録の運用とカードアクセスの範囲を内見で確認してください。ゲート内の警備の考え方はパーク・リージェント、ウェストサイドIII、サウス・ブルックス、アディバの各ページにあります。エリア全体の比較はクアラルンプール日本人エリアの記事、暮らしの総額は生活費の記事、住んでからの後悔は移住のデメリットの記事へ。

家族構成・通勤先・予算・入居時期をWhatsAppで送っていただければ、警備体制の異なる候補を並べて個別に案内します。

よくある質問

マレーシアは日本より治安が悪いですか

強盗は外務省の記載で日本の約12倍、強制性交等は約2倍、殺人は日本とほぼ同水準です(2024年・人口10万人あたり)。街頭犯罪と詐欺の被害リスクは、日本より高く見積もる必要があります。

外務省の危険レベルは、KLやペナンに出ていますか

出ていません。2026年6月15日時点で危険情報の対象はサバ州東側の一部のみで、クアラルンプール・ペナン・ジョホールバルを含む半島部に危険情報とスポット情報はありません。

犯罪は増えていますか、減っていますか

2024年は全国の届出が前年比11.1%増でしたが、警察は2025年3月〜2026年3月の指数犯罪を前年同期間比6.4%減と発表しました。重い犯罪は減少傾向で、詐欺は増加が続いています。

一番被害が多い犯罪は何ですか

外務省は街頭犯罪(スリ・置き引き・ひったくり)の増加と、詐欺の相談増加を挙げています。詐欺は2024年に35,368件で、10年前の約5.6倍です。最多の手口は銀行・警察を騙る電話詐欺です。

ペナンとジョホールバルの治安はKLより良いですか

比較できる統計はありません。ペナンは2025年1〜9月の指数犯罪が28.7%減でしたが、集計期間と指標がKLと異なります。ジョホール州は年間の公表数字を確認できませんでした。

被害に遭ったら、大使館に届出を頼めますか

頼めません。外務省によれば、警察への被害申告は被害者本人が行う必要があり、大使館を含む第三者は代行できません。警察通報が難しい場合の連絡先として、クアラルンプール日本人会の防犯ページは在マレーシア日本国大使館(03-2177-2600・24時間対応)を案内しています。